経理担当者の突然の退職は、多くの企業にとって大きな課題となっています。
本記事では、経理の退職に伴うリスクと、それを業務改善の機会として活用する方法について詳しく解説します。さらに、経理部門のアウトソーシングという選択肢についても触れ、企業にとって最適な解決策を探ります。
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経理の突然の退職に起こりうるリスク
経理担当者の突然の退職は、企業にとって深刻な問題をもたらす可能性があります。以下に、主なリスクとその影響について説明します。
- 経理業務の短期間での引き継ぎが難しい
- 経理業務に遅延や不備が起こる
- 人手不足で人材採用がとても難しい
- ブラックボックスが発見され問題化
経理の業務は、他社員に簡単に引き継ぎすることができず、加えて人手不足で採用が難しいので、経理の突然の退職は企業にとって大きなリスクになります。
特に一人経理の場合は、リスクが大きくなります。「一人経理のリスク」は下記の記事で紹介しています。
短期間の経理業務引継ぎは難しい
経理業務は専門性が高く、短期間での引継ぎが困難です。
経理担当者は長年の経験と知識を持っており、自社独自のやり方もあるため、短時間で新しい担当者に伝えることは容易ではありません。突然の退職の場合、引継ぎが不十分になり、業務の質が低下する可能性があります。
経理業務に遅延や不備が起こる
経理担当者の退職後、業務の遅延や不備が発生するリスクが高まります。
特に、月次決算や税務申告などの重要な業務において、ミスや遅延が起これば、企業の財務管理に深刻な影響を与える可能性があります。
売掛金の請求が遅れたり、給与明細の記載に不備があると、企業としての信頼性や法令順守にも関わる重大な問題です。
人手不足で人材採用がとても難しい
経理人材の不足は深刻な問題です。特に中小企業では、経験と専門知識を持つ経理担当者を見つけることが困難な場合が多いです。
採用時期が遅れ、経理担当者と直接引き継ぎが出来ない場合、その後の経理部門の運営に支障をきたし、ミスが発生するリスクが上がります。
人手不足により、新たな人材の採用に時間とコストがかかり、業務運営に支障をきたす可能性があります。
ブラックボックスが発見されて問題化
経理担当者の退職により、これまで見過ごされていた問題点や不適切な処理などのいわゆる「ブラックボックス」が明らかになることがあります。
例えば、不適切な会計処理や内部統制の不備が発覚し、企業の財務状況や信頼性に影響を与える可能性があります。
経理の退職は業務改善の機会である4つの理由
経理担当者の退職は、一見するとリスクに思えますが、業務改善の絶好の機会でもあります。以下に、その理由を4つ挙げて説明します。
経理・財務のDX状態を見直す
経理担当者の退職を機に、企業の経理・財務部門のデジタルトランスフォーメーション(DX)状況を見直すことができます。
従来の手作業による処理や古いシステムや業務フローを、最新のクラウド会計ソフトや、RPA、生成AI技術を活用し、業務効率を大幅に向上させることが可能です。
経理・財務の代行BPOを導入検討
経理担当者の退職は、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の導入を検討する良い機会となります。
BPOを活用することで、専門性の高い経理業務を外部の専門家に委託し、社内リソースを核となる事業に集中させることができます。
これにより、業務の質を維持しつつ、コスト削減も実現できる可能性があります。
経理部門の非効率な点を改善
退職を機に、これまでの経理業務の流れを見直し、非効率な点を洗い出すことができます。
例えば、不必要な承認プロセスの簡素化や、重複作業の削除などを行うことで、業務の効率化が図れます。
残された経理スタッフの負担を軽減し、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。
経理部門の退職理由の検証
経理担当者の退職理由を詳しく分析することで、組織の問題点が明らかになることがあります。
例えば、過度な労働時間、キャリアパスの不明確さ、待遇の不満などが浮き彫りになれば、それらの改善に取り組むことで、今後の人材確保と定着率の向上につながります。
社内に経理は本当に必要かよく考えてみよう
経理担当者の退職を機に、そもそも社内に経理部門が必要かどうかを再考してみましょう。現在、経理部門のアウトソーシングする企業は増加しており、市場の拡大を背景に、アウトソーシング企業のサービスの質が向上しています。
経理業務を外部委託することで、以下のようなメリットを得られる可能性があります:
- コスト削減:フルタイムの経理スタッフを雇用するよりも、必要な業務のみをアウトソーシングすることでコストを抑えられます。
- 専門性の確保:会計事務所や専門のBPO企業に委託することで、高度な専門知識を持つプロフェッショナルのサービスを受けられます。
- リスク分散:複数の専門家がチームで業務を担当することで、一人に依存するリスクを軽減できます。
- 最新ツールの活用:アウトソーシング先の最新のシステムやツールを利用できるため、自社でシステム投資をする必要がありません。
- 経営資源の集中:経理業務をアウトソーシングすることで、経営陣は本業に集中できます。
ただし、完全に経理機能を外部委託するかどうかは、企業の規模や業種、経営戦略によって慎重に判断する必要があります。
経理担当者の退職リスクへの対策
経理担当者の退職リスクに備えるためには、以下のような対策が効果的です。
- マニュアル
- クラウド・デジタル・AI化を推進
- 経理業務をアウトソーシングする
マニュアル化する
経理業務のマニュアル化は、退職リスクを軽減する最も基本的な対策です。詳細な業務手順書を作成することで、新しい担当者への引継ぎがスムーズになり、業務の継続性が確保されます。マニュアルには以下の要素を含めるべきです:
- 日次、月次、年次の業務スケジュール
- 各種帳票の作成・請求書の発行手順
- 使用するシステムの操作方法
- 取引先との連絡方法や注意点
- 法令遵守に関する重要事項
マニュアルは定期的に更新し、常に最新の情報を反映させることが重要です。
クラウド・デジタル・AI化を推進
経理業務のデジタル化やAI化を推進することで、個人の経験や知識に依存しない業務体制を構築できます。具体的には以下のような施策が考えられます:
- クラウド会計ソフトの導入
- 請求書や領収書のデジタル化
- 生成AIを活用した業務短縮
- データ分析ツールの活用
これらのツールを導入することで、業務効率が向上するだけでなく、人的ミスのリスクも軽減されます。
経理業務をアウトソーシング
経理業務の一部または全部をアウトソーシングすることで、退職リスクを大幅に軽減できます。アウトソーシングのメリットには以下のようなものがあります:
- 専門知識を持つプロフェッショナルによる高品質な業務遂行
- 人材確保や教育にかかるコストの削減
- 業務の継続性の確保
- 最新の会計基準や法令に対応したサービス
ただし、アウトソーシングを検討する際は、自社の機密情報管理や、内部統制の観点からも慎重に検討する必要があります。
経理部門のアウトソーシング市場は拡大中
経理部門のアウトソーシング市場は、近年急速に拡大しています。この背景には以下のような要因があります:
- 人材不足:経理人材の確保が難しいため、アウトソーシングに依頼する
- コスト削減圧力:固定費である人件費の変動費化が進んでいる
- テクノロジーの進化:クラウド会計ソフトやAI技術の発展
- 働き方改革:長時間労働の是正を背景に外注化が進んでいる
- グローバル化:現地の会計基準に対応できる専門ニーズ
市場調査会社の予測によると、世界の財務・会計アウトソーシング市場は今後も年平均5-6%程度の成長が見込まれています。
日本国内でも同様のトレンドが見られ、特に中小企業を中心にアウトソーシングの需要が高まっています。
経理代行が最も退職の備えになる理由
経理代行サービスは、経理担当者の退職リスクに対する最も効果的な対策の一つです。
- 新規契約も最短1か月で可能
- 属人化・ブラックボックス化からの脱却
- 会計データ・試算表の質が高い
- 仕組み化され引き継ぎもスムーズ
以下に、経理代行が優れた選択肢である理由を説明します。
新規契約も最短1カ月で可能
多くの経理代行サービスは、新規契約から業務開始までの期間が短く、最短で1カ月程度で導入が可能です。
経理担当者が突然退職した場合でも、事前に契約しておくことで、緊急時にすぐにサービスを利用開始できる体制を整えることができます。
属人化・ブラックボックス化からの脱却
経理代行サービスを利用することで、特定の個人に依存した業務体制から脱却できます。専門チームが業務を担当するため、個人の退職による影響を最小限に抑えられます。
また、アウトソーシング企業により用意された業務プロセスを採用することで、これまでブラックボックス化していた業務も透明化されます。
会計データ・試算表の質が高い
経理代行サービスは、専門知識を持つプロフェッショナルチームによって運営されています。
そのため、提供される会計データや試算表の質が高く、正確性も担保されます。
また、最新の会計基準や税法に常に対応しているため、コンプライアンスリスクも低減できます。
仕組み化され引継ぎもスムーズにできる
経理代行サービスでは、業務プロセスが標準化・仕組み化されているため、担当者が変更になった場合でもスムーズな引継ぎが可能です。
また、クラウドベースのシステムを使用することが多いため、データの共有や業務の可視化が容易です。これにより、将来的に業務を内製化する際も、スムーズな移行が可能となります。
まとめ
経理担当者の退職は、企業にとって大きなリスクとなる可能性がありますが、同時に業務改善の機会でもあります。本記事では、経理の退職に伴うリスクと対策、そして経理代行サービスの利点について解説しました。
主なポイントは以下の通りです:
- 経理の突然の退職は、業務の遅延や不備、人材採用の困難さなどのリスクをもたらします。
- しかし、この機会を利用して業務改善やDX推進を図ることができます。
- 経理業務のマニュアル化、デジタル化、アウトソーシングなどの対策が有効です。
- 経理代行サービスは、迅速な導入、高品質な業務遂行、スムーズな引継ぎなどのメリットがあります。
企業は自社の状況を慎重に分析し、最適な解決策を選択することが重要です。経理機能の重要性を認識しつつ、効率的で持続可能な業務体制を構築することが、長期的な企業の成功につながるでしょう。