中国にある子会社が、日本の本社から商標や製造ノウハウ、技術などのライセンスを受ける場合、通常それに対する対価としてロイヤルティを支払う場合、ロイヤルティを支払わなければ日本本社で寄附金となってしまいますし、支払うにしても合理的な根拠がなければ中国の税務当局に否認されてしまうというようなつまるところ二国間での税の取り合いをどう調整するかという問題に帰着しますが、親会社と子会社の間でも調整が難航することもあります。
中国での損金算入の可否
中国での国外関連者へのロイヤルティの支払いについては、それが独立企業間価格であれば課税所得の計算上損金算入が認められますが、そうでない場合は税務当局はそれを調整する権限を持っています。
また、2015年に公布された企業の国外関連者への費用支払に係る企業所得税問題に関する公告」(国家税務総局公告[2015]16号)において、以下のようなケースでは損金算入が認められないと規定しています。
- 国外関連者が機能とリスクを担っておらず、実質的な経営活動も行っていない
- 国外関連者が単に無形資産の法的所有権を保有するのみで、その価値創造に対する貢献がない
無形資産の価値創造に貢献している、というのは少しわかりづらいですが、無形資産の開発や価値の増大、維持、保護および応用といったことに対してそれぞれが負担する機能やリスク、使用する資産によってそれぞれの貢献度を図り、もし無形資産を持っていても価値創造に貢献していなければそれに対して支払うロイヤルティは損金にできない、ということです。
増加傾向にある損金算入を巡る税務調査
このような国外に支払うロイヤルティの損金算入を巡る税務調査は近年非常に増えています。
毎年度集中的に調査対象とする業種が選定され、規模の大きな会社には外資、内資を問わず調査を受けることが多いようですが、当たりが強い外資系企業の中でも、こうした移転価格に絡む調査では概して欧米系企業に比べ利益率が低い傾向にある日系企業の方が、指摘を受けた際の影響が大きくなりがちです。
特にハイテク企業の認定を受け、優遇税率を享受している企業は、その認定条件に自社内でコアな知的財産を保有していることが必要となるので、国外に支払っているロイヤルティとの矛盾が生じていないかといった観点での税務調査リスクが高いと言えます。