経理の外注の相場とメリットデメリット、業者の選び方は解説

経理外注の相場とメリットデメリット

経理の外注とは、企業が経理業務の一部または全部を外部の専門業者に委託することです。

近年、多くの企業がコスト削減や業務効率化を目的に経理業務の外注を検討しています。

本記事では、経理外注のメリット・デメリットや相場、適切な業者の選び方などを詳しく解説します。

このページの監修者
松下 省治
株式会社アイエーピー 代表取締役
専門は、国際税務、国際会計、国際組織再編。経歴はサン・マイクロシステムズ(株)およびSunMicrosystem Inc. 日本及び米国で勤務を行い、国際税務及び米国基準での会計に携わる。デル(株)経理財務部長として日本4社の経理部門の統括を行う。シトリックス・システムズ・ジャパン(株)日本および韓国法人の管理部門統括本部長。

経理の外注とは?

経理の外注とは、企業が自社の経理業務を外部の専門業者に委託することを指します。経理業務は企業運営の要であり、正確性と効率性が求められます。外注することで、専門知識を持つ業者のサポートを受けられるメリットがあります。

経理の外注範囲には、主に以下の3つのパターンがあります:

  1. 一部の業務を依頼する
  2. 経理部門を丸ごと依頼する
  3. 経理部門の改善・コンサルティングを依頼する

経理の外注を検討しているのであれば、これらのパターンの中から自社のニーズに合った外注方法を選択しましょう。

一部の経理業務を依頼する

一部の業務を依頼する場合、企業は自社で対応が難しい、または効率化したい特定の経理業務のみを外部に委託します。例えば、給与計算や請求書発行、税務申告などの業務が該当します。このパターンは、コア業務に集中したい企業や、特定の専門知識が必要な業務を効率的に処理したい企業に適しています。

経理部門を丸ごと依頼する

経理部門全体を外部に委託する方法です。この場合、日々の仕訳から決算業務、税務申告まで、経理に関するほぼ全ての業務を外部業者が担当します。中小企業や経理人材の確保が難しい企業にとって、有効な選択肢となります。ただし、情報管理や社内とのコミュニケーションに注意が必要です。

経理部門の改善・コンサルティングを依頼する

この方法では、外部の専門家が自社の経理部門の現状を分析し、業務フローの改善や効率化のためのアドバイスを提供します。経理業務自体は社内で行いながら、専門家のサポートを受けて部門全体の最適化を図ります。

経理外注で依頼できる業務内容

経理外注で依頼できる業務は多岐にわたります。主な業務内容を以下の表にまとめました:

カテゴリー 具体的な業務内容
日次業務 仕訳入力、帳簿作成、現金・預金管理
月次業務 試算表作成、残高照合、月次決算
給与計算 給与計算、社会保険手続き、年末調整
決算業務 決算書作成、税務申告書作成
財務分析 財務諸表分析、経営指標の算出
コンサルティング 経理業務改善、財務戦略立案

これらの業務の中から、自社のニーズに合わせて外注する範囲を決定することが重要です。

経理外注の相場:費用の目安

経理外注の費用は、委託する業務の範囲や企業規模によって大きく異なります。一般的な相場の目安を以下に示します:

  1. 記帳代行のみ:月額5万円〜10万円程度
  2. 給与計算(従業員10名程度):月額5万円程度
  3. 経理業務全般(中小企業):月額10万円〜30万円程度
  4. フルアウトソーシング:月額50万円以上

ただし、これらはあくまで目安であり、実際の費用は以下の要因によって変動します:

  • 取引量(仕訳数)
  • 従業員数
  • 業種特有の複雑さ
  • 求められる専門性の度合い
  • 委託先の規模や知名度

経理外注を検討する際は、複数の業者から見積もりを取り、自社のニーズと予算に合った最適な選択をすることが重要です。

経理を外注するメリット:企業にもたらす6つの利点

経理業務を外部に委託することで、企業は様々なメリットを享受できます。主なメリットを以下に解説します:

コスト削減

経理業務を外注することで、人件費や設備投資のコストを削減できます。専門の経理担当者を雇用する場合と比べ、外注では必要な業務にのみ費用を支払うため、効率的な運用が可能です。特に中小企業にとっては、大きなコストメリットとなります。

採用・雇用のリスク軽減

経理人材の採用や教育にかかる時間とコストを削減できます。また、従業員の退職や長期休暇による業務の停滞リスクも軽減されます。外注先は常に複数の担当者が業務をカバーするため、安定した経理業務の提供が期待できます。

リソースの集中

経理業務を外部に委託することで、企業は本業に集中できるようになります。経営者や従業員は、より付加価値の高い業務に時間とエネルギーを注ぐことができ、結果として企業全体の生産性向上につながります。

不正を抑制できる

外部の専門家が経理業務を担当することで、内部不正のリスクを軽減できます。第三者の目が入ることで、不正や誤りの発見が容易になり、企業の財務の健全性が保たれやすくなります。

属人化を防げる

経理業務を特定の社員に依存することを避けられます。外注することで、業務の標準化と可視化が進み、人事異動や退職による業務の停滞リスクを軽減できます。また、経理知識の偏りも解消されやすくなります。

安定した経理業務が提供される

専門の経理業者は、最新の会計基準や税法に精通しています。常に正確で信頼性の高い経理業務を提供してくれるため、企業は安心して経営に集中できます。また、繁忙期にも柔軟な対応が期待できます。

経理を外注するデメリット:注意すべき5つの課題

経理外注には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。以下に主なデメリットを解説します:

急ぎの対応が難しい

外部に業務を委託しているため、急な依頼や変更に即座に対応できない場合があります。特に、経営判断に必要な財務データの即時提供が難しくなる可能性があります。このため、重要な意思決定のタイミングが遅れる可能性があることを考慮する必要があります。

成長期・繁忙期に想定外のコストがかかる

業務量に応じて料金が変動する契約の場合、企業の成長や繁忙期には予想以上のコストがかかる可能性があります。取引量が急増した場合、外注費用も比例して上昇するため、予算管理に注意が必要です。

社内に経理ノウハウが残らない

経理業務を完全に外部に依存することで、社内に経理のノウハウが蓄積されにくくなります。長期的には、自社の財務状況を深く理解し、適切な経営判断を行う能力が低下する可能性があります。

外注費がかかる

経理業務を外部に委託する場合、相応の外注費用が発生します。小規模企業や起業間もない企業にとっては、この外注費が大きな負担となる可能性があります。自社で経理を行う場合と比較して、コストメリットがあるかどうか慎重に検討する必要があります。

情報漏えいのリスクがある

経理業務には企業の機密情報が含まれるため、外部委託による情報漏えいのリスクが存在します。適切なセキュリティ対策を講じている業者を選ぶ必要がありますが、完全なリスク回避は難しい場合もあります。

経理外注業者の見極め方:4つの重要なポイント

適切な経理外注業者を選ぶことは、外注の成功に直結します。以下の4つのポイントを参考に、自社に最適な業者を見極めましょう。

質の高い経理・会計の知識・レベルを持っているか

選定する業者が十分な経理・会計の専門知識を持っているかを確認することが重要です。具体的には以下の点をチェックしましょう:

  • 税理士や公認会計士が在籍しているか
  • 業界での実績や経験年数
  • 提供サービスの範囲と深さ
  • 最新の会計基準や税法への対応状況

質の高い知識を持つ業者を選ぶことで、正確で信頼性の高い経理業務を期待できます。

自社の実務と提供されるサービスが合っているか

外注業者のサービス内容が自社のニーズに合致しているかを確認します。以下の点に注意しましょう:

  • 対応可能な業務範囲
  • 使用している会計ソフトとの互換性
  • 業界特有の会計処理への対応
  • レポーティングの頻度と内容

自社の業務フローと外注業者のサービスがスムーズに連携できることが、効率的な経理外注の鍵となります。

セキュリティ対策・Pマークを持っているか

情報セキュリティは経理外注において非常に重要です。以下の点を確認しましょう:

  • プライバシーマーク(Pマーク)の取得状況
  • 情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証
  • データ保管方法と暗号化対策
  • スタッフの情報管理教育状況

適切なセキュリティ対策を講じている業者を選ぶことで、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。

柔軟な対応をしてくれるか

企業の成長や環境の変化に応じて、経理業務のニーズも変化します。選定する業者が以下のような柔軟な対応ができるか確認しましょう:

  • サービス内容のカスタマイズ
  • 業務量の増減への対応
  • 緊急時の迅速な対応
  • コミュニケーションの取りやすさ

柔軟な対応ができる業者を選ぶことで、長期的な関係を築き、変化する企業ニーズに対応できます。

まとめ:経理外注の有効活用で企業の成長を加速

経理の外注は、多くの企業にとって有効な選択肢となります。主なポイントを以下にまとめます:

  1. 経理外注には、コスト削減や業務効率化などの明確なメリットがあります。
  2. 一方で、情報漏えいのリスクや社内ノウハウの蓄積が難しいなどのデメリットも存在します。
  3. 外注の範囲や費用は企業のニーズによって大きく異なるため、慎重な検討が必要です。
  4. 適切な外注業者の選定が、経理外注の成功の鍵となります。