中小企業の経理がずさんな理由と改善方法!経営的な効果とは?

経理は会社のお金を管理する仕事であり、規模や業種問わず全ての企業において重要です。しかし規模の小さい中小企業では、経理がずさんなケースが多くみられます。

ずさんな経理には様々なリスクがあるため、早急に改善するべきです。今回は中小企業の経理がずさんになりがちな理由や経理がずさんであることのリスク、改善する方法等を詳しく解説します。

リスクと改善した結果の効果をよく理解することで、ずさんな経理を改善するきっかけとなるかも知れません。

このページの監修者
松下 省治
株式会社アイエーピー 代表取締役
専門は、国際税務、国際会計、国際組織再編。経歴はサン・マイクロシステムズ(株)およびSunMicrosystem Inc. 日本及び米国で勤務を行い、国際税務及び米国基準での会計に携わる。デル(株)経理財務部長として日本4社の経理部門の統括を行う。シトリックス・システムズ・ジャパン(株)日本および韓国法人の管理部門統括本部長。

中小企業の経理がずさんな理由

中小企業の経理がずさんになりがちな理由は主に以下の5つです。

  • 社長が経理部門を軽視している
  • 社長が片手間で経理をやっている
  • 経理の人材が不足している
  • 経理部門の人材が不足している
  • 経理部門がアナログな状態

1つずつ解説しているので、当てはまるものがあれば改善していきましょう。

社長が経理部門を軽視している

経理がずさんになりがちな理由として多くみられるのが、社長が経理部門を軽視していることです。

経理は会社のお金を管理・記録する、非常に重要性の高い仕事です。それと同時に、経理は売上に直接つながる仕事ではありません。

一概にはいえませんが、中小企業の社長は売上アップへの意識は強いものの、売上につながらない仕事は軽視しがちな傾向です。事業規模が小さいため、規模の拡大を目指して売上アップにつながる仕事を優先する傾向ともいえるでしょう。

売上につながらない経理も軽視する対象となり、経理に割くリソースを少なくしがちです。結果として経理がずさんになってしまうケースが多くみられます。

社長が片手間で経理をやっている

前項で紹介した「社長が経理部門を軽視している」に似た理由です。経理は売上につながらないため経理を担当する人員を雇わず、社長が空いた時間に経理業務を終わらせるイメージです。

社長は会社の代表であり、社長にしかできない仕事は多く存在します。そのため社長は時間やエネルギー等のリソースにあまり余裕がない状態でしょう。そのような状態で社長が経理までこなそうとすると、当然経理業務は片手間になってしまいます。

経理に限らず、片手間でこなす業務はずさんな結果になりがちです。

経理部門の人材が不足している

経理部門を個別に設けているものの、経理部門の人材が不足しているため経理がずさんになるパターンもみられます。

中小企業は人手不足のケースが多いです。そして経理は売上に直接つながる仕事ではありません。リソースに限りがある場合はどうしても売上につながる仕事が優先的となり、そうでない仕事の人材確保は後回しになりがちです。

経理部門の人材が足りないため仕事に手が回り切らず、ずさんな結果になってしまうケースが多くみられます。

経理を難しく考えている

最初に紹介した「経理を軽視している」とは反対に、経理を難しく考えすぎている結果、計入りがずさんになってしまうケースもあります。

経理は簿記や会計の専門知識が必要ではあるものの、特別な資格は必要ありません。未経験でも挑戦しやすい仕事である上、経理求人の需要は比較的高めです。

にも関わらず、経理はお金に関する重要な仕事というイメージから「経理は難しい仕事である」「自社には経理人材を確保するだけの余裕がない」という考えを持つケースが少なくありません。

経理を難しく考えるあまり、経理に対する対応を後回しにしてしまい、結果として業務がずさんになってしまうのです。

経理部門がアナログな状態

経理部門がアナログな状態だと非効率さがあるため、ずさんになる可能性が高まります。様々な取引先の経理部門デジタル化により、取引先がペーパーレスで進行していると、データを紙に変換する一手間も生じます。

デジタル化は適応する企業にはメリットを与えますが、適応できない企業には逆に負担が増えることになります。紙とデジタルの両方で保管・処理することも出てくるため、ずさんになるリスクが高まります。

経理がずさんな中小企業に潜むリスク

経理は会社の資金の流れを扱う仕事であり、重要性が非常に高いです。にも関わらず経理をずさんにしてしまえば、当然ですが財務的な様々なリスクが高まります。この章では経理がずさんな中小企業に潜むリスクを6つ紹介します。

倒産

最も注意するべきなのが倒産リスクです。

経理がずさんとは、お金の管理や記録がずさんな状態ともいえます。お金の管理・記録が適切にできていなければ、会社の財務状態や経営成績の正確な把握もできません。結果として「思っていたよりも財務状態が悪い」「十分な利益が出ていないことを把握していなかった」等が起こり得るのです。

経理がずさんでは自社の状態を正しく把握できないため、知らず知らずのうちに倒産リスクが高まり、気付いた時には手遅れという恐れがあります。

現金不足

現預金の管理は経理業務の1つです。日々入出金の管理・記録や会計取引の記帳、帳簿と実際の残高が一致しているかの確認等をすることで、現預金の残高を正しく把握できます。

また、日々の会計取引を正しく記録することで、何にどれぐらいお金を使っているのか把握できる状態になります。経理業務を適切にこなすことで、現在使えるお金はどれぐらいあるのか、今後どれぐらいのお金が出ていくのか等を把握できるのです。

経理がずさんな状態では、現預金残高や支出額を正しく把握できません。お金の流れを意識せずに支出を繰り返すことになるため、気付いた時には現金不足という結果になる恐れがあります。

銀行や投資家からの資金調達がしにくくなる

経理がずさんな中小企業は、銀行や投資家からの資金調達がしにくくなる恐れが大きいです。

銀行の融資では必ず審査が行われ、返済能力に問題がないと判断された場合のみ融資が実行されます。しかし、経理がずさんな状態では以下のような事態が起こりやすいです。

  • 財務諸表が適切に作られておらず、不信感を持たれる
  • 財務状態や経営成績が悪く、融資ができないと判断される
  • 財務状態・経営成績を正しく把握できていないため、銀行の担当者からの質問に答えられず審査に悪影響を及ぼす

投資家からの資金調達も同様です。経理がずさんでは財務状態や経営成績が悪くなりやすく、結果として投資をするに値しないと判断される恐れが大きくなります。

税務調査

経理がずさんでは税務調査が行われた時に指摘を受けるリスクも高いです。

適切な財務諸表の作成や納税額の正確な計算のためには、日々の経理業務を正しく行う必要があります。ずさんな経理では財務諸表の作成や税額の計算に誤りが生じやすく、税務調査で指摘を受けて追徴課税の対象になる恐れが大きいです。

従業員に不満・不信が募る

従業員に不満・不信が募るリスクも高いです。ずさんな経理によって以下のような事態が起こりやすくなり、結果として不満や不信につながるイメージとなります。

  • 経理について経営者が把握しておらず、従業員から質問された時に適切な回答ができない
  • 経理担当者への対応が雑になる、経理担当者の待遇が悪くなる
  • 財務状態や経営成績を把握していないことが原因でその場しのぎでの対応を進める場面が多く、従業員を振り回しがちになる

取引先から信用を失う

ずさんな経理は財務状態や経営成績を正しく把握できない事態につながります。自社の状態を正しく把握できていなければ、想定通りの事業活動が出来ないという場面も起こりがちです。

自社内部で完結するトラブルであればともかく、外部が絡むトラブルでは相手先に迷惑がかかります。たとえば、現金不足で期日までに買掛金を支払えない、高額の取引が出来ない等の事態が起こりやすいでしょう。

このようにずさんな経理が原因で取引先を巻き込むトラブルが発生し、取引先から信用を失う恐れもあります。

ずさんな経理を改善すると経営戦略の何に役立つ?

ずさんな経理の改善は前章で紹介したリスクの解消と同時に、経営戦略関連での様々な良い効果も期待できます。経理戦略的なメリットを理解することで、経理の業務改善に踏み出すモチベーションにもなるはずです。

  • 業績の低迷を早期に発見
  • 企業の成長期のコストを抑制できる
  • 支出を常にコントロールできる
  • 金融機関・投資家から資金調達をしやすくなる

業績が低迷する兆候を早期に捉える事ができる

ずさんな経理を改善すれば財務状態や経営成績を正しく把握できるようになり、業績が低迷する兆候を早期に捉えられる可能性が高いです。

業績の低迷は、売り上げ増加とコスト削減の両方の施策を打つ必要がありますが、コスト削減の方が割と簡単に着手できることが多いです。コスト削減をするにも、何にいくらかかっていて、今後はどの程度のコストがかかるのかなど、具体的なコスト削減項目が分かりません。

最悪の場合「定額かかるコストを、ただ解約手続きをしていないだけ」というものもあるかも知れません。

経理がずさんな状態では、キャッシュフローの悪化や売上の低迷等が起きていてもなかなか気付けません。一方、適切な経理業務を行っていれば直近の財務状態や経営成績が数字で正確に表されるため、すぐに異変に気付くことができます。

業績が低迷する兆候を発見するのが早いほど、迅速な対策が可能です。取り返しのつかない事態になる前に手を打てる可能性が高くなるでしょう。

企業成長期にかかる経費を抑制できる

企業成長期はどうしても支出が多くなりがちです。固定費であれば管理しやすいですが、変動費の管理は難しい場合があります。せっかく売上が大幅に上昇しても「想像以上にコストがかかった」という陥る可能性もあります。

企業の成長期には、高額の支出が起きるのは自然ですが、収支を把握していない・無駄な支出が発生している等の事態は防ぐ必要があります。

経理業務を適切にこなしていれば、必要な支出・無駄な支出の把握がしやすいです。お金の流れを正しく把握することで、企業成長期にも無駄な支出をせず、経費を抑えやすくなるでしょう。

予算管理が厳密になり支出のコントロールができる

ずさんな経理の改善は予算管理の改善にもつながります。

現預金残高をはじめとした財務状態を正しく把握できれば、自社に合う予算額の設定および予算管理もできるようになります。予算管理が厳密になり支出のコントロールができるため、無駄な支出の削減に効果的です。

金融機関・投資家から信用され資金調達がしやすくなる

ずさんな経理は財務状態や経営成績の悪化、外部の利害関係者からの不信感につながります。金融機関や投資家からの信用を得られなければ、融資や投資による資金調達ができません。

会計書類の提出スピードはもちろんの事、財務諸表や資金繰り表の内容を質問されたときに、経営者が意味のある回答ができないと、信用を落とすことになるでしょう。

ずさんな経理を改善すれば金融機関や取引先からの信用を失うリスクが下がります。「経理業務を丁寧に行っている」と好印象を与え、信用を得られる可能性も高いです。

金融機関や取引先からの信用を得られるため、資金調達がしやすくなる効果を期待できます。

中小企業がずさんな経理を改善する方法

最後に、中小企業がずさんな経理を改善する方法は下記の3つです。

  • 経理部門をアウトソーシングする
  • 経理部門の人材を増やす
  • 経理部門デジタル・AI化を進める

その他にも業務フローの見直しなど様々な方法はありますが、主な3つの改善方法を紹介します。

経理部門をアウトソーシングする

経理部門のアウトソーシングは、経理部門の人材が不足している企業や複雑な経理業務が必要な企業におすすめです。経理を外部の専門サービスに委託することで、自社における経理業務の負担を最小限にしながらも適切な経理が可能になります。

経理部門の委託先として以下の例が挙げられます。

  • 経理アウトソーシング会社
  • 会計事務所・税理士法人
  • フリーランス

経理部門の人材を増やす

経理部門の人材を増やす方法は、人材を増やす余裕がある企業や自社で経理業務を行いたい企業におすすめです。未経験者を採用してから経理担当者として育成する方法と、経理経験者を採用し即戦力として仕事を任せる方法に分けられます。

経理部門の人材を増やす方法では、採用費・人件費・研修等の様々なコストがかかります。現金不足や経営成績の悪化等に陥らないよう、収支や現預金の管理を行った上で人材確保および人材育成を進めましょう。

経理部門デジタル化・AI化を進める

経理部門のデジタル化を進める方法は、経理部門が存在する企業やリソースの余裕がある企業におすすめです。経理業務に限らず、デジタル化・AI化には業務の効率化を実現させる効果や、属人化防止の効果が期待できます。

特に最近では生成AIを使うと、資金繰り表や財務諸表のデータをAIが読み取り、財務分析をしてくれます。会計知識についてもAIに質問すると回答を得ることもできます。

また生成AIを用いたワークフローの構築も、生成AIの使い方さえ覚えてしまえば、月額2,000~5,000円程度で作成できてしまいます。

ただし、やみくもにデジタルツール・AIサービスを導入すれば良いわけではありません。自社で発生する経理業務の内容や現状抱えている課題、自社に必要な機能等を洗い出した上で導入するツールを選びましょう。

ずさんな経理を改善するならiAPの経理アウトソーシングにお任せ

経理代行・アウトソーシングサービスを提供しているアイエーピーでは、お客様のニーズに合わせた柔軟な料金プランを提供しています。

経理業務を外注するだけでなく、経理部門を強化したり、戦略的な管理会計を実施されたい場合や、M&A、IPOの経理・会計業務、国際ビジネスの会計までご依頼いただくことができます。

経理代行・アウトソーシングは、信頼できる会社選びが重要です。アウトソーシングして経理部門が弱くなってしまうのは本末転倒です。

アイエーピーでは、初回相談・見積もりを無料で承っており、お客様の現状と課題をヒアリングした上で、最適なプランをご提案いたします。

経理業務の効率化と正確性向上をお求めの方は、ぜひアイエーピーにお問い合わせください。質の高いに経理アウトソーシングをご提案いたします。